6月23日 令和2年度の「過労死等の労災補償状況」が厚生労働省から公表された。
特徴をいくつか指摘する。
脳・心臓疾患については、請求件数が昨年度から152件減って784件となった。
これは、コロナ禍で、長時間労働をする人が全体として減ったからだと思われる。報道によれば、厚生労働省もそのように分析しているようである。
長時間労働を減らすことが過労死等の防止になることはより明らかになったといえる。
なお、請求件数、認定件数とも道路貨物運送業がもっとも多い職種であるとのことである。業種別の対策もさらにすすめるべきである。
死亡の認定数は67件であった。認定率が、令和元年の36.1%から31.8%に減少していることは気になる。
精神障害については、請求件数は昨年とほとんど変わらず2000件を超えており、高止まりである。
さらに、認定件数が令和元年が509件であったのに対し、608件と急増している。
もっとも、自殺は81件であり、昨年の88件より減少している。
精神障害の労災認定が多い業種は、医療福祉が多い。
もともと高ストレスな業務であるが、コロナ禍でさらに強い心理的負荷を受けることになったのではないかと推測される。
出来事別の支給件数では、「上司から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が99件、「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせをうけた」71件とハラスメントが全体の27%をしめており、これらが自殺や精神障害の大きな原因の一つとなっている。
精神障害で特徴的なのは、審査請求、再審査請求、訴訟により取消となったことに伴い認定された件数である。自殺についてはこれまで7件、4件、5件、2件と一桁で推移してきたところ昨年は12件の取消、認定があった。
認定されないため、諦めずに戦っているご遺族には、逆転例も出ていることで励みになる。
精神障害が増加し、また取消が増えたのは、昨年5月に認定基準が改定され、「パワーハラスメント」が強い心理的負荷になり精神障害の原因となることが明示されたことも大きいと考えられる。これまでも「(ひどい)いじめ、嫌がらせ」という項目があった。厚生労働省は今回の改正は、新しい医学的知見に基づくものではないという説明であった。しかし、実際に適用の場面では、これまで認定されていなかったものが認定されるようになった汰可能性がある。
昨年も精神障害は請求件数は減っていない。むしろ認定件数は増えている.
全体の労働環境は心の健康を害しているのではないかと心配である。
(2021年6月26日修正、加筆)