2019年12月24日、労働政策審議会では、賃金の消滅時効について、公益委員から見解が示されました。
その要点は
・ 賃金請求権の消滅時効期間は、民法一部改正法による使用人の給料を含めた短期消 滅時効廃止後の契約上の債権の消滅時効期間とのバランスも踏まえ、5年とする
・ 起算点は、現行の労基法の解釈・運用を踏襲するため、客観的起算点を維持し、こ れを労基法上明記する こととすべきである。
というところにあります。
5年とするところは是認できます。
しかしながら、次のような妥協案が示されています。
ただし、賃金請求権について直ちに長期間の消滅時効期間を定めることは、労使の権利関係を不安定化するおそれがあり、紛争の早期解決・未然防止という賃金請求権の消 滅時効が果たす役割への影響等も踏まえて慎重に検討する必要がある。このため、当分 の間、現行の労基法第 109 条に規定する記録の保存期間に合わせて3年間の消滅時効期間とすることで、企業の記録保存に係る負担を増加させることなく、未払賃金等に係る 一定の労働者保護を図るべきである。
消滅時効期間を「当分の間」3年にするというのです。
今回の民法改正で2020年から短期消滅時効はなくなり、すべての債権が5年となる。それにもかかわらず、賃金だけは「当分の間」3年というほかの債権より短い期間で消滅するというのは不均衡である。
日本労働弁護団は12月26日「民法よりも労働者に酷な条件を労働基準法において定めることは、労働者保護を目的とする労働基準法と根本的に矛盾する。公益委員見解のうち⑵の適用猶予は、労働基準法に違反して賃金の支払いを怠っているにもかかわらず、その支払いを免れるための使用者側の居直りを受け入れたものであって、到底受け入れることはできない。」
と厳しく批判しています。(賃金請求権の消滅時効について「当分の間3 年間とする」との公益委員見解に反対する声明)
しかし、労政審議会は、翌日27日にも審議会を開き、意見をとりまとめたようです。
あらためて、賃金債権の消滅時効はただちに5年するように主張したいと思います。