第14回 国選弁護シンポジウム 横浜

国選弁護シンポジウム 日本弁護士連合会 横浜 神奈川県弁護士会
国選弁護シンポジウム会場の看板

 2017年11月17日、日本弁護士連合会 第14回国選弁護シンポジウムに参加した。

 

 ここでは、これまでの国選弁護制度の歴史と、そして今の課題について議論した。

 ここで報告された国選弁護の経過について、あらためて振り返りたい。

 

1 死刑4再審事件と「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である。」との指摘

 

 1979年,6月に財田川事件,9月に免田事件,12月に松山事件と3つの死刑事件の再審開始決定がされた。1983年12月に免田事件が無罪判決,1984年3月に財田川事件,1984年7月に松山事件の無罪判決がなされた。

 

 相次いで死刑事件の再審決定,無罪判決がなされた中,1985年,平野龍一博士は,「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である。」と述べた(「現行刑事訴訟の診断」(団藤古稀祝賀論文第4巻,有斐閣,1985年出版)。

 

 当時は、起訴されるまで、国選弁護人がつけられることがなく、弁護士を依頼しないまま取り調べが行われるのが通常だった。それがうその自白やえん罪の温床だと言われた。

 

 その後,1986年9月には島田事件の(死刑事件)の再審開始決定がされ,1989年に無罪判決がされた。

 

2 国選弁護シンポジウム,司法シンポジウム,そして松江の人権擁護大会

 

 島田事件の再審開始決定がなされた翌年、1987年第1回国選弁護シンポジウムが開催された。

 

 さらにその2年後、1989年9月の松江市の人権擁護大会において,日弁連派「当連合会は国民の人権擁護という弁護士の基本的責務を果たすべく,国民とともに,叡智を結集し,現在の刑事手続を抜本的に見直し,刑事弁護の一層の充実強化をはかるための機構を設置するなど,あるべき刑事手続の実現に向けて全力をあげてとりくむものである。」と宣言した。

 

3 日弁連刑事弁護センターの発足

 

 1990年4月に日弁連は,日弁連刑事弁護センターを発足させた。同センターの重点課題の第1として起訴前の弁護体制の強化が確認された。具体的にはイギリスの当番弁護士制度に学び,日本でも創設しようというものであった。そして,全国の可能な地域でこれを実現していこうというものであった。

 

4 当番弁護士制度の発足

 

 1990年,大分県弁護士会,福岡県弁護士会で始まった当番弁護士制度は,燎原の火のごとく瞬く間に全国に広がり,1992年には,全国52の全ての弁護士会で実施されるに至った。  

 

5 司法制度改革審議会の意見書

 

 司法制度改革審議会は,2001年6月の最終意見書において「被疑者に対する公的弁護制度を導入し,被疑者段階と被告人段階を通じ一貫した弁護体制を整備すべきである。」と明記した。

 

6 司法制度改革推進本部公的弁護制度検討会

 

 この意見を受けて同年12月,内閣に司法制度改革推進本部が設置され,被疑者段階も含む公的弁護制度の具体化に向けた審議が開始された。

 

 勾留段階から,段階的に被疑者国選弁護制度が実施されることとなった。

 2004年6月には,刑訴法が改正され,被疑者段階も含む国選弁護制度が創設されることとなった。

 

7 被疑者国選弁護制度の段階的実施

 

 2006年10月には,短期1年以上の法定合議事件等(第一段階)で,被疑者国選弁護制度が実施された。

 2009年5月には,対象事件がいわゆる必要的弁護事件(第二段階)にまで拡大された。

 

8 勾留された全ての被疑者を対象とする国選弁護制度

 

 2011年,法制審議会に新時代の刑事司法制度特別部会が設置された。この部会は2014年7月の部会案において勾留された全ての被疑者を対象とする国選弁護制度が取りまとめ,同年9月には,法制審議会が,この内容を法務大臣に答申をした。

 2016年6月,刑訴法が改正され,国選弁護制度の対象が,全ての勾留事件に拡大されることになった。2018年6月までに施行されることとなった。

 

 えん罪が明らかに「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である。」といわれた刑事司法について、私たちの先輩弁護士が当番弁護士制度をつくり、そして、勾留されたすべての被疑者について、2018年6月までには、国選弁護人がつけられる制度が完成することになったのである。

 

 今回、国選弁護シンポジウムでは、逮捕段階についても国選弁護人がつけられる制度を求めて、さらなる弁護実践の展開と、制度についての議論をした。

 

 私は、実行委員としてこのシンポジウムの実行委員会に参加して準備をした。

 

 弁護士になったときには被疑者国選制度があった世代の弁護士にも刑事司法の変化をしり、ぜひさらなる発展にむけて一緒に活動したい。

 

横浜 インターコンチネンタルホテル 国選弁護シンポジウム会場
会場だったインターコンチネンタルホテル