2017年6月30日、平成28年度の過労死等の労災補償状況が厚生労働省から発表されました。
厚生労働省の発表を見ていきます。
まずは脳・心臓疾患について、以下引用します。
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1 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況
(1) 請求件数は825件で、前年度比30件の増となった。【 P 3 表1-1】
(2) 支給決定件数は260 件で前年度比9件の増となり、 うち死亡件数も前年度比11件増の107件であった。 【 P 3 表1-1】
(3) 業種別(大分類)では、請求件数は「運輸業,郵便業」212件、「卸売業,小売業」106件、「製造業」101件の順で多く、支給決定件数は「運輸業,郵便業」97件、「製造業」41件、「卸売業,小売業」29件の順に多い。 【 P 4 表1-2】
業種別(中分類)では、請求件数、支給決定件数ともに業種別(大分類)の「運輸業,郵便業」のうち「道路貨物運送業」145件、89件が最多。 【P5 表1-2-1、P6 表1-2-2】
(4) 職種別(大分類)では、請求件数は「輸送・機械運転従事者」187件、「販売従事者」97件、「サービス職業従事者」93件の順で多く、支給決定件数は「輸送・機械運転従事者」90件、「専門的・技術的職業従事者」30件、「生産工程従事者」27件の順に多い。 【 P 7 表1-3】
職種別(中分類)では、請求件数、支給決定件数ともに職種別(大分類)の「輸送・機械運転従事者」のうち「自動車運転従事者」178件、89件が最多。 【P8 表1-3-1、P9 表1-3-2】
(5) 年齢別では、請求件数は「50~59歳」266件、「40~49歳」239件、「60歳以上」220件の順で多く、支給決定件数は「50~59歳」99件、「40~49歳」90件、「30~39歳」34件の順に多い。 【P10 表1-4】
(6) 時間外労働時間別(1か月又は2~6か月における1か月平均)支給決定件数は、「80時間以上~100時間未満」106件で最も多く、「100時間以上」の合計件数は128件であった。 【P13 表1-6】
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支給決定数とは、要するに、労基署が過労死等と認めた件数です。
支給数、死亡支給数とも減っていません。
運送業、特に運転手が大変だということがわかります。
それから、長時間労働で病気になっている人がたくさんいることが分かります。
次に精神障害についてみていきます。
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2 精神障害に関する事案の労災補償状況
(1) 請求件数は1,586件で前年度比71件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比1件減の198件であった。【P15 表2-1】
(2) 支給決定件数は498 件で前年度比26件の増となり、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比9件減の84件であった。【 P15 表2-1 】
(3) 業種別( 大分類)では、請求件数は 「医療,福祉」302件、「製造業」279件、「卸売業,小売業」220件の順に多く、支給決定件数は「製造業」91件、「医療,福祉」80件、「卸売業,小売業」57件の順に多い。【 P16 表2-2 】
業種別(中分類)では、 請求件数、支給決定件数ともに業種別(大分類)の 「医療,福祉」のうち 「社会保険・社会福祉・介護事業」167件、46件が最多。 【P17 表2-2-1、P18 表2-2-2】
(4) 職種別(大分類)では、請求件数は 「専門的・技術的職業従事者」361件 、 「事務従事者」307件、 「販売従事者」220件の順に多く、支給決定件数は「専門的・技術的職業従事者」115件、「事務従事者」81件、「サービス職業従事者」64件の順に多い。 【P19 表2-3】
職種別(中分類)では 、請求件数、支給決定件数ともに職種別(大分類)の「事務従事者」のうち「一般事務従事者」198件、47件が最多。 【P20 表2-3-1、P21 表2-3-2】
(5) 年齢別では、請求件数は「40~49歳」542件、「30~39歳」408件、「50~59歳」295件、支給決定件数は「40~49歳」144件、「30~39歳」136件、「20~29歳」107件の順に多い。【P22 表2-4】
(6) 時間外労働時間別(1か月平均)支給決定件数は、「20時間未満」が84件で最も多く、「160時間以上」が52件であった。 【P24 表2-6】
(7) 出来事(※)別の支給決定件数は、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」74件、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」63件の順に多い。
※「出来事」とは精神障害の発病に関与したと考えられる事象の心理的負荷の強度を評価するために、認定基準において、一定の事象を類型化したもの 【P26 表2-8】
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請求件数がさらに増えています。
自殺の件数は減りましたが全体の認定件数は増えています。
専門的・技術的職業従事者が多いのが特徴です。
時間外労働ですが「20時間未満」が最も多いのが印象的です。
出来事別の支給決定件数は、ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた が多くなっています。
つまり長時間労働よりもパワハラで精神障害になっている場合が多いようです。
一方で160時間以上も52件あり、2番目に多いのも驚きです。
裁量労働の件数も発表されました。問題アリと言うことがわかります。
一方で、これだけ?という印象を持ちました。
時間管理がなされていれば、もっと多くの認定がなされるのではないでしょか。
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3 裁量労働制対象者に係る支給決定件数
(1) 過去6年間で裁量労働制対象者に係る脳・心臓疾患の支給決定件数は22件で、うち専門業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が21件、企画業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が1件であった。 【P27 表3】
(2) 過去6年間で裁量労働制対象者に係る精神障害の支給決定件数は39件で、うち専門業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が37件、企画業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が2件であった。 【P27 表3】
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過労死等防止対策推進法が施行されて4年目です。まだこれからということでしょう。
まずは労災補償されるべきものを労災補償していくなかで、一つづつ対策をしていくことだと思います。
今まで、発覚していなかったものが発覚しただけで、世の中は確実に進んでいると信じたいものです。