荒木飛呂彦さんの「荒木飛呂彦の漫画術」という本を読みました。
荒木さんは、少年ジャンプの人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の作者です。
一風変わった漫画ですが、私もとても楽しみに読んでいた漫画でした。
その作者の書いた新書だったので、読んでみました。この年になって、漫画家になるつもりもないし、その能力もないのですが、ここでかかれていることは、何か表現をする上で、あるいは仕事をする上で大変共感する内容でした。
この本では、荒木さんが、漫画家になるときに、漫画を編集者に読んでもらうために、あるいは漫画を雑誌に掲載してもらえるように工夫したことが書いてあります。
そのためには、最初の工夫が大切だと書いてありました。最初に面白そうだと思ってもらわないと読んでもらえない。タイトル、表紙絵のデザイン。最初の1ページ目に何を書くか。そして、さらに読み進めてもらうためには分かりやすくなくてはならない。そのために一コマ目は5W、1Hが大切である。
これは、弁護士が裁判官に書面を提出するとき、あるいは裁判員裁判に、弁護人の主張を説明するために意識しなければならないこととして参考になると思います。
また、荒木さんは、漫画には王道がある。読者の共感を得なければならない、といいます。
ここは、創作し、読者を楽しませることを目的とする漫画と、すでにある事実を前提に主張する弁護士の仕事は少し違います。弁護士は、裁判官に有利な判決を書いてもらうために話を作ってはいけません。しかし、伝えたいことを表現するためには、読者の共感を得るように適切に表現しなければならない。そのための王道を知らなければならないという点では、大切な指摘です。
荒木さんは、漫画には自分の伝えたいことを持たなければならない。それはあくまで自分の人生に沿っていることが重要である。自分では興味がないのに「売れるテーマ」を考えるのは間違いだといいます。「何を描きたいか」「なぜ描くのか」ということは、漫画家にとって根本的な、一番大切なことだといいます。
弁護士としても、なぜ弁護士をするのか、ということはとても大切なことです。
漫画術という本ですが、多くの示唆を与えてくれる本でした。
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