自殺報道が自殺を誘発しないか?

 8月5日、著名な方が自殺したとの報道がありました。

 報道でしか情報がないので、軽々しくコメントできません。

 しかし、自殺について、あまりにも詳細に、しかし不十分な報道がなされているので気になりました。

 自殺予防の観点から報道を考えるべきであるという見解があったはずだと思い、webで調べて見ました。WHOが、自殺予防、メディア関係者への手引きというものをだしていることがわかりました。日本語版は、横浜自殺予防センターのホームページに掲載があります。河西千秋さん(横浜市立大学医学部精神医学教室)が作成しています。

http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~psychiat/WEB_YSPRC/pdf/media2008.pdf

 そもそも、国が、こういうものを作成していないのかと思って探してみました。ありました。

 内閣府の共生社会政策の自殺対策のページ

http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/index.html

 に自殺対策関連情報があり、「WHO自殺予防ガイドライン」「報道関係者のための手引き」の項目があります。

 クリックすると自殺予防 メディア関係者のための手引き(2008年改訂版日本語版)

http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/link/kanren.html

のページにいきます。ここで、横浜自殺予防センターの日本語訳のページにリンクが張ってありました。

 これをみてみると、報道はこのガイドラインを意識していないようです。

 

 ところで、この著名な方は、心療内科を受診していた、「疲れた」という遺書があったなどの報道もあります。いわゆる過労自殺であり、労災ではないかとも考えられます。

 

 労災の認定基準の中に、心理的負荷が強の場合として

 

 重大な事故、事件(倒産を招きかねない事態や大幅な業績悪化に繋がる事態、会社の

信用を著しく傷つける事態、他人を死亡させ、又は生死に関わるケガを負わせる事態等)の

責任(監督責任等)を問われ、事後対応に多大な労力を費した。

 

重大とまではいえない事故、事件ではあるが、その責任(監督責任等)を問われ、立場や職責を大きく上回る事後対応を行った(減給、降格等の重いペナルティが課された等を含む。

 

 などが上げられています。当てはまる可能性があるのではないかと思われます。

 まだ、そのようなことを考える時期ではないとは思いますが、今後検討されることを期待します。

 

 報道には「自殺では責任取れぬ」という見出しで識者の意見を紹介しているものもありますが、この方は、精神疾患によって正しい判断ができなくなっていた可能性もありますので、このような報道の仕方は問題があります。

 

 そもそも、これほど詳細に取り上げる必要があるのかと思います。各紙、各報道機関は、他社に載らない情報を載せたがるので、規制は難しいのかもしれません。せめて、精神疾患による自殺で、本人の自由な意思によるものではない可能性があること、労災の可能性があることなどの観点、そして、そのような場合でも自殺を思いとどまる必要があることを呼びかけることなど、自殺防止の観点の報道をもっとしてほしいと思います。